内定をとって一安心の学生もいれば、就活がうまくいかず焦りを感じ始める学生も多いこの時期。いずれの場合でも、就職活動や社会人生活において知っておきたいことの1つが、労働条件に関する知識です。そこで今回は、社会保険労務士でキャリアコンサルタントの資格ももつ北井一行先生に、学生の皆さんに伝えたい労働条件の知識について話を聞いてみました。
北井 一行 先生
企業・店舗に対する労務管理のコンサルティングや企業研修、経営者向け機関誌の執筆・講演活動を行う一方、学生への労働法教育・キャリア支援を行う等、多彩な実績を持つ社労士。特定社会保険労務士・国家資格キャリアコンサルタント。
■学生に対して、アルバイトの労働条件を知っているか聞いた調査では、基本的なルールを知らない人が大多数という結果に
2015年に厚生労働省が大学生等1000人に対して行った調査によると、「アルバイト代を事業主が一方的に引き下げることはできない」ことを知っている人は24.8%で、「アルバイトでも時間外労働や深夜労働には割増賃金を払う必要がある」ことを知っている人も42.7%に過ぎないなど、大半の学生が、労働条件に関する知識をあまりもっていないことがわかりました。この結果から、正社員の労働条件の知識も十分には有していないことが推察されます。実際、私が接している学生にも、就職後の労働条件についてあまり知らない人が多くいます。
学生1000人にきいた、アルバイトの労働条件について知っていること
・アルバイト代を事業主が一方的に引き下げることはできない→認知率24.8%
・アルバイトでも、時間外労働(1日8時間を超えた場合など)や深夜労働(午後10時から午前5時)には、通常の賃金の2割5分以上の金額を支払う必要がある→認知率42.7%
・アルバイトでも、一定の条件を満たせば年次有給休暇が付与される必要がある→認知率41.4%
・アルバイトでも仕事によるけがは労災保険を使う必要がある→認知率32.3%
出所:厚生労働省「大学生等に対するアルバイトに関する意識等調査」2015年
■「労働条件相談ほっとライン」で多いのは、「労働時間」「給料」「休日」に関する相談。まずはここから伝えたい
一方、厚生労働省が同年に公表した「労働条件相談ほっとライン」に多く寄せられた内容では、多い順に「休日・休暇」 「賃金不払残業」 「長時間労働」という内容でした。「労働条件相談ほっとライン」は対象を学生に限らない相談窓口ですが、多い相談内容は、学生の認知率が低い項目と重なる印象です。ですから「休日」「給与・残業代」「労働時間」等の知識は、学生の皆さんに教える必要性が特に高い内容であると言えます。
北井講師が薦める「これだけは学生に教えたい」労働条件の知識5選
1.給料に関すること(賃金支払い5原則、残業代の意味など)
2.労働時間に関すること(法定労働時間、シフト制等の意味や関連するルールなど)
3.休日に関すること(法定休日、有給休暇などの意味や関連するルールなど)
4.退職に関すること(自主退職、解雇などの意味や関連するルールなど)
5.社会保険に関すること(労働保険・社会保険の説明と事例の紹介など)
■労災保険についても、知らない人がほとんどなのが実情
労災保険についても、上の調査結果で「アルバイトでも仕事によるけがは労災保険を使う必要がある」と知っている人が約3割に過ぎないように、あまり知らない人がほとんどです。
大切な内容ですので、知らない学生には教えてあげるのがよいでしょう。
学生の皆さんには、就活の進め方や仕事の楽しさ・意義等とともに、こうした「自分を守る」知識も合わせて教えたいものです。貴校では、これらの知識を学生に伝える機会を用意されていますでしょうか?
■厚生労働省主催【大学生・高校生等のための労働条件セミナー】(無料)もご活用ください
厚生労働省は、学生に対して労働条件の知識や事例等を伝えるセミナーを開催しています。希望される大学に講師を派遣して行う「学内開催・講師派遣型」のセミナーを対面またはオンラインで提供しているほか、東京・大阪・名古屋では、学生または職員の皆様がお一人から参加できるオープン型のセミナーも秋に実施します(東京10/11、大阪10/4、名古屋10/5。全日15:00~16:30)。
いずれも費用はかかりませんので、ご興味のある方はホームページをご覧ください。
https://public.lec-jp.com/teach-roudouStudent/