日々、大学の就職支援課の職員様とお話をしているなかで学生面談に苦戦しているというお話をよく耳にします。
なかなか就活に前向きになってくれない、、、
大手にこだわりすぎていて、中小企業に目を向けてくれない、、
本記事では3つのポイントで学生面談の際に注意したいことをお伝えしていきます。
①学生の状況や気持ちを理解する
面談の目的を正確にとらえる~本音を引き出す~
まずは目の前の学生がなぜこの場に相談に来たのか、主訴を捉える必要があります。
我々支援者の想定とは全く違う事を思っている場合もあります。
例えば、
8月に内定を一つも取っていない⇒早く内定が取りたくて焦っているんだろう。
と想定していたとしても、実は就職すること自体に意味を見いだせておらず、不安があるというよりかは、このまま就職活動するかどうか悩んでいる。というケースです。
この場合に、「焦っているのだろう」という、間違った仮説で面談を進めてしまうと、相談に来た学生の悩みを解決することができず、間違った方向性のアドバイスをしかねません。さらには、学生が「この人は私のことをわかってくれない」と感じてしまう可能性もあります。
本質を捉えるためには、
まず「この人はわかってくれる人なんだ。わかってくれそう」と感じてもらい、
学生の本音を引き出すことが第一のポイントとなります。
本音の引き出し方~話しやすい場づくり~
学生の本音を引き出すためにはまず、学生が話しやすい空間を作ること大切です。
面談者の顔の表情、仕草一つ一つがこの空間作りには必要不可欠です。
日々面談ばかりで疲れていると、表情などが堅くなってしまうこともあるかもしれませんが、
学生の家族になったくらいの気持ちで、学生が何を言ってもまずは受け入れる状態をキープできるとよいでしょう。
本音の引き出し方
話しやすい場づくりができたら、まずは「今の状況」を聴き、「その状況に対してあなたは今どう感じているのか」を話してもらいましょう。
時に「今の状況」だけを聞いて話を進めてしまうケースがあります。それは支援者である我々が状況を聞き、「この学生はこう感じているのだろう」と勝手に解釈してしまっています。解釈が正しい場合ももちろんありますが、必ず「どう感じているのか」を学生自身から聞いてみましょう。
この、「どう感じているか」というところが、学生の本音の部分になります。
そして、どう感じているかが、なかなか出てこなかったり、今の状況を深堀するときには、
「あなたのことをちゃんと理解したいから聞きたいんだけど、もう少し詳しく教えてくれる?」と聞いてみてください。この言葉は学生が安心してくれる言葉の一つです。
②アドバイスではなく、気付かせる
我々は、長い就労経験があるが故に、今から社会に出て働くぞ!という学生たちに対し色々とアドバイスしてあげたくなるものです。「そんな甘い考えじゃ、どこも通らないよ!」とか「こういうところも受けてみたら?」などなど。
学生を思っての言葉ではあるものの学生自身が納得感を持っていなければ、「言われてやっただけ」の受け身状態になりかねません。または反発心を抱いてしまう学生も出てくる可能性があります。
気づかせるための言葉かけとは
「こうした方がうまくいくのにな」と感じた時は、
それを気付かせるために、どういう言葉をかけるかを考えましょう。
例えば、カウンセリングをしていて「人気業界に絞りすぎて内定を取得できておらず、学生のレベルや適性を考えたときにこの業界のまま就活をするのは厳しいかもしれない。方向転換するべきである」と感じたとしましょう。
その場合、学生に「今のまま進んだときどうなっていそうか」少し先の未来の自分を想像させます。
「このまま、その業界だけに絞って就活するのが悪いわけではない。だけど、もしも。その業界から1社も貰えない状態で卒業してしまったらどうなりそうかな?〇〇業界は毎年とても人気で、就職率も〇〇くらい。入社出来なかった時の事を考えておく必要はあるんじゃないかな?」といったような声掛けをします。
アドバイスはしないが、知識や情報は共有する
アドバイスはしない、と言いましたが、我々の持っている知識を共有することは必要です。
・〇月以降になったら求人数は減ってくるよ。
・既卒で就職活動している人たちはアルバイトで生活費を稼ぎながらになって
なかなか就活に専念できずにいる人も多いよ。
脅すわけではないですが、事実ベースで伝えるべき情報は正しく伝えましょう。
その事実を踏まえたうえで学生にしっかりと自分の頭で考えてもらいます。
そして、就職活動を成功させるためには、二の手、三の手が必要であることに学生自身が気付くことが重要なのです。
③今すぐやるべき具体的な行動を示す
最後のポイントは具体的な行動を示すことです。
ここでも重要なのは、「これをした方がいい」というアドバイスではありません。
なりたい自分を想像して、自分の意思で行動を決めてもらうということです。
先程の例で考えましょう。
例えば学生が、「希望している〇〇業界で決まるのが1番だけど、どこにも決まらないのは嫌だ。卒業までには必ず就職先は見つかっていたいです。」と話したとしましょう。
あくまでもベースは、学生自身です。
学生から出た言葉に対して、
「○○ということは、こんな風にしていてもいいかもね!」
「なぜ、その業界を志望したの?似てるところもあるかもしれないから、なぜその業界を志望したのか詳しく教えて」
「今の話をまとめると、こういうところにエントリー増やしてみるという事だね!」
「早速、今日帰ったらエントリーシート作ってみたらいいんじゃない?」
といったような流れで、学生がどんな事をこれからやっていけばよいのかを考える手助けをします。
自分で決めて、行動をした。その手助けをしてくれたのが面談担当者。
この立ち位置が面談者として、ベストです。
カウンセリング事例
食品業界で働きたいと思って就活をしてきたAさん。諦めたわけではないけど、このままでいいか不安で相談にいらっしゃいました。
相談に来た当初は、食品業界を完全に諦めてはいないけど、業界1本に絞っている状態が不安とのこと。けれども、やりたいことはこれ以外に見つからず、どうしたらいいのか不安な気持ちが積もるばかりでした。
カウンセリングでは、まず「なぜその業界がいいのか」「その業界じゃないと絶対にダメな理由」を深堀りしました。結果、「人に喜ばれたい。特に、生活により近いものに携わっていたい」という気持ちがあることがわかりました。
「Aさんにとって人に喜ばれる、しかも生活してるうえで身近に感じるってところがポイントなんだね!いいね!」と、まずは受け入れます。
そのあと、なぜそう感じるのかをAさんに深堀していくと、Aさんは普段から料理やお菓子作りが好きで、家族や友人に作ったお菓子を配って、喜んでもらうことに自分も喜びを感じていたそうです。食という生活で身近なものに携わって、より多くの人を笑顔にしたいと思っていました。
ほかにもエピソードを聞いてみると、友人の誕生日のプレゼント選びが好きだったり、所属しているバスケットボールのサークルでは、初心者の人も楽しめるように率先してルールややり方を教えていたそうです。
いろいろなエピソードやそう感じる理由を深堀していくと、Aさんは食品業界へのこだわりというよりかは、「人に喜んでもらう」ことが大切なのではないかと考えました。
「そういう喜びを感じる仕事って、食品業界以外でもいっぱいあるっていうか、めっちゃいっぱいありそうじゃない?」深堀をして整理をしたあとに、こう聞くと、Aさんは、「確かに!業界に絞るというよりかは、どんな人たちにどんな風に喜ばれ仕事なのかを基準に企業を探してみます!」と言って、食品業界以外の企業で、「人に喜ばれる仕事」という基準で会社探しをし始めました。
結果、時間はかかったが、オフィスに関する困りごとを解決する商社へ入社。現在も、営業職で頑張って働いています。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
毎日学生面談を実施し、様々な方がいらっしゃる中で、1人1人対応をしていくのはとても大変で気苦労も多い事かと思います。我々は相談に来る学生よりも人生経験も社会人経験もあるため、手っ取り早く自身の経験からアドバイスする方が面談時間も短くなるかと思います。
しかし、そのような面談をしてしまうと結局、学生自身が納得感を持っておらず、途中で就職活動を諦めてしまったり、何度も面談に来てしまう学生が増え、時間を取られてしまう事が多くなってしまうのではないでしょうか。
「これでいいですか?」と答えを求めてくる相談も多いかもしれませんが、就職活動は答えがありませんし、これからの社会人生活において、初めから答えが用意されていることは少ないです。就職活動は、社会人にになる前の自ら課題を見つけ、解決する力を養うことにもつながります。
ぜひ、学生が主体的に自ら問題点に気付き、どんなアクションを起こすのかを一緒に考えてあげてください。
本記事が学生を支援する皆様にとって少しでも参考になれば幸いです。