関西の学生と接していると、
「関西の学生には、関西の学生ならではの強みがあるのに、それをうまく活かせておらず、もったいない」
と感じることが多々あります。また同時に、関西の学生ならではの弱み、というのも存在します。
貴校では、就職指導を行う際、「関西の学生ならではの強み・弱み」を意識した指導をされていますか?
本記事では、
・関西学生ならではの強みと、それを活かす方法
・関西学生ならではの弱みと、それを克服する方法
についてお伝えします。
執筆は、
京都に生まれ育ち、大学も就職も京都で、社会人7年目の時にジェイックに転職、
それから約4年間、当社大阪支店の就職アドバイザーとして大阪はじめ関西圏の
大勢の若者の就職を支援してきた、私、岡部恵美が担当させていただきます。
「関西学生の強み・弱みという視点ではあまり指導していない」
ということであれば、ご参考いただけましたら幸いです。
関西学生の強みは、「初対面の大人との対話に慣れていること」
当社は、これまで全国20,000人以上の若者の就職を支援していますが、関西の学生(若者)の強みは、
「初対面の大人との対話が得意なこと(苦手でないこと)」と捉えています。
就職活動における面接の場というのは、学生と、まさに「初対面の大人」である面接官との「対話」の場。
ですから、関西学生の多くが「初対面の大人との対話」を得意とする(苦手とはしない)ことは、
面接官から高評価を得る上で大きな強みといえるのです。
(もちろん、全員得意、ということはありません。個人差はあります。)
特に最近の学生は、全国的に、「同年代の友人との、LINE等を通じたテキスト・コミュニケーション」が中心ですから、「初対面の大人との対面(顔を合わせた)コミュニケーションが得意」であることは、今の時代にあって特に大きなアドバンテージとなります。
大人とのフランクな関わりが多い環境で育った関西の学生
では、なぜ関西の学生は「初対面の大人との対話」が得意なのでしょう?
それは彼らが、「知らない大人とのフランクな関わり」の多い中で育ってきたからです。
よく「関西の人はおせっかい」「人好き」などと言われますがまさにその通りで、
例えば彼らの多くは、
・幼少時、親と一緒にスーパーに行くと、
複数の大人から「いくつ?」「かわいいね」等と声をかけられ、それに返答してきた
・小中学校時代、公園で野球をしていたら、知らないおじさんが
「そのバットの振り方は違うで!」などと言い寄ってきて、そこから30分近く話し込んだ
といったことを何かしら経験しながら成長してきています。
こうした例は、関西の方なら納得感があるのではないでしょうか。
このような環境で育っているから、
関西の学生には「初対面の大人との対話が得意」な学生が多いのです。
初対面の面接官も「近所のおっちゃん」ぐらいにとらえれば、きっとうまくいく!
「初対面の大人との対話が得意」にもかかわらず、
面接となると、その強みを活かせない学生が非常に多くいます。
面接の場を特別な場ととらえ、あるいは面接官を特別視する結果、
「対話」ではなく、用意したものを伝えるだけの「説明・発表」に終始してしまうのです。
「対話」と「説明・発表」の違いは、このようなイメージです。
「対話」・・・・・・双方向型、話の流れに合わせた、面接官とのキャッチボール
「説明・発表」・・・一方通行型、事前に用意した内容を面接官に伝達、
キャッチボールというより、バッティングセンター
「言葉のキャッチボール」ではなく「バッティングセンターで一人で打つ」ような状態。
しかし相手は、面接官という「人」であり、機械ではありません。
そして面接官は、学生に「一人で打つ」ことを求めているのではなく、自分との対話を求めています。
そうであれば、学生は・・・
せっかく「初対面の大人との対話」が(本当は)苦手でないのですから、少し大胆にいうならば、
面接官を、
『自分のことを知りたいと思っている、近所のおっちゃん』ぐらいに思って
話をすればよいのです(面接官が年配の男性の場合)。
面接官を「特別な大人」ととらえるのではなく、
自分がこれまで接してきたような「ふつうの大人」ととらえて、
自分がこれまでしてきたようなコミュニケーションをとる。
そのようにスタンスに変えるだけで、見違えるように良い印象、自然な印象になる学生は大勢います。
キャッチボールが得意でも、最初の投球「自己紹介」には注意!
さて、面接官を「ふつうの大人」と考えれば良いキャッチボールができそうですが、
さらにここで1つ、キャッチボール(対話)をうまく始めるコツがあります。
それは、「最初に投げるボール」を間違えないこと。
「最初に投げるボール」とは「自己紹介」のことで、良い自己紹介をすることで、
対話をよりスムーズに始めることができます。
では、良い自己紹介とは、どんな自己紹介でしょうか?
それは、「学生の『人となり』がわかる自己紹介」です。
「学校・学部」「住所」「部活やサークル」を羅列するだけでは、
「人となり」はわかりません。
そうではなくて、「部活やサークルに、どんなふうに取り組んだのか」
あるいは今の話なら、「就職活動には、どんな気持ちで臨んでいるか」・・
あまり語りすぎると自己紹介の域を超えてしまいますが、少し付け加える程度なら、
面接官が質問をしやすくなる(返球をしやすくなる=対話がスムーズに始まる)という意味で、
プラスに働きます。
最初の投球「自己紹介」を変えたことで成功した事例
1つ事例を紹介します。
ある学生は、私と話す時は、すごく自然でスムーズなコミュニケーションをとるのですが、
面接となるとさっぱり喋れず、企業からも「何を言っているのかわからない」といった感想を
当社にもらっていました。
本人に聞くと、自己紹介では、
「学部・学科・住所・部活」などを一通り喋って終わっているとのこと。
しかしこの彼は、
「自分は、留年もしてしまった。これまで心配をかけた親のためにも、
なんとしても就職を決めて、頑張って働きたい。親にはすごく感謝している」
と、熱い想いをもっているのです。
そこで私は、
「その感謝の気持ちを、自己紹介にいれよう。あなたの良さは、そこにあるよ。
だから面接官には、極端な話、『親への感謝』だけ伝わればいい、ぐらいの
気持ちで臨んでごらん」
と伝えて面接に臨んでもらいました。
すると、彼の想いが面接官に伝わったのか、
彼自身も本心を最初に喋れたことでその後の受け答えを自然体でできたのか、
彼はとても良い評価を面接官からもらい、内定獲得となったのです。
実際、企業からも
「彼の熱意や『人となり』が見えたので採用したいと思った」という声をいただきました。
強みについて、まとめ
こうした事例も踏まえて、強みについてまとめます。
①関西の学生の強みは、「初対面の大人との対話に慣れていること」
→面接官を「近所のおっちゃん」ぐらいに思ったほうが自然な対話ができる!
②自己紹介に、「人となり」がわかる内容をいれると、良い対話を始めやすい
→1つでいいので、その人らしさがわかる内容を含めよう!
次に、関西の学生の弱みについてです。
関西学生の弱みは、「対話が上手なだけに、浅い、軽い人と見られるおそれがあること」
一方で、関西の学生の弱みは、
「対話が上手なだけに、ともすると『思考の浅い、軽い』人だと思われるおそれがあること」です。
話の上手な学生は特に意識したいところで、
話ができるからこそ、面接官に対して
「物事を深く考えずに喋っている。思考が浅い」
「明るいキャラクターなのはいいが、ちょっと軽い印象だ」
といったイメージを与えてしまうのです。
弱みを克服するコツは、「見た目の印象とのギャップを感じさせるエピソード」を話すこと!
こうした学生にお勧めしたいのが、「ギャップを意識したエピソード」を話すことです。
見た目から想像がつくような長所について話すのではなく、
見た目からは意外に感じるような長所を面接官に伝えるのです。
「明るい」「ノリが良い」「ペラペラ喋れる」「チャラい」・・・
こうした印象の学生が、
「実は、思慮深い一面もある」
「実は、コツコツと努力(継続)していることがある」
といった話をすると、
「そう見えないけど、そういう一面もあるのか」と、
ギャップがあるだけに好印象に映ることがあります。
・電車では、年配者に席を譲るようにしている
・家族と住んでいるが、家事の〇〇は自分の担当として毎日やっている
など、なんでも良いので、エピソードを用意しておくとよいでしょう。
なお、見た目とのギャップを感じさせる話をするためには、
前提として、「自分の見た目」を正確に把握している必要があります。
学生自身は、これをわかっていない可能性がありますので、
その際は、われわれ支援者が伝えてあげるとよいでしょう。
以下、実際にあった例を紹介します。
ギャップを活かした成功事例 楽しいこと好きのサークルの部長が、実は・・
その学生は見るからに明るいキャラクター、
いわゆる「チャラめ」の関西学生で、サークルの部長を務めていました。
当初、彼は自己紹介で
「サークルでは、毎週、飲み会を企画して、
部員たちのコミュニケーションを大切にしていました」
といった話をしていたのですが、面接でなかなか良い結果が得られません。
当社の企業担当が、面接をした企業に話をきくと、
「明るく活動的なのはわかったが、ちょっと浅く見える。
物事を深く考えることができる人なのか、わからなかった」とのこと。
そこで私は、違うエピソードを考えるように彼にアドバイスしたところ、
彼は次のようなエピソードを話してくれました。
「ある部員が『サークルをやめたい』と言い出したことがありました。
話をきいてみると、他の部員ともめている、とのことでした。
そこで私は、その2人と私と、3人でじっくり話す場をもうけて、
双方に話をしてもらい、私の想いなども伝えました。
結果として、もめごとは解消され、誰もサークルをやめずにすみました。」
私はこれを聞いて、
「いいね!次の面接ではその話をしてみようよ」と彼に伝え、
彼はこのエピソードをもって面接に臨みました。
すると、エピソードを変えて最初に受けた面接で、
彼は見事に良い結果を得ることができたのです。
もちろん、これだけが勝因ではないと思いますが、それまでとは異なり、
彼の思慮深い一面が面接官に伝わったことは、想像に難くありません。
彼は、「大勢を相手に、楽しく」という、見た目どおりの部長像ではなく、
「一人と向き合って、真剣に」という、見た目と異なる部長像、
自分の一面を見せたことで、面接官に良い印象を与えることができたのです。
弱みについて まとめ
弱みについてまとめます。
①関西の学生の弱みは、対話が上手なだけに、
『思考の浅い、軽い』人だと思われるおそれがあること
→ギャップを活かしたエピソードで、好印象を与える!見た目から想像のつく
長所を話すのではなく、見た目からは意外に感じるような長所を伝えよう。
②その前提として、「自分の見た目」を知る必要がある
→学生がわかっていないようなら、支援者側が伝えてあげましょう。
さいごに
いかがでしたでしょうか。「エピソードを用意する」というと、
ややテクニカルなニュアンスになるかもしれませんが、
「自分の良いところをしっかりと面接官に伝える」のは大切なことですよね。
そして多くの場合、学生には、学生自身が気付いていない良さがたくさんあるものです。
さらに関西の学生の場合、
「本来の自分を出せば、面接官と自然なやりとりができて、
自分の良さもしっかり伝えられるはずなのに、面接だとうまくできない」
という学生がとても多いと感じます。
我々支援者の好ましい関わりによって、彼ら・彼女らが自分の良さを
100%面接官に伝えられるような、そんな支援をしたいものです。
本記事が、関西の学生を支援する皆様にとって少しでも参考になれば幸いです。