以前の記事では、企業側の面接の意図・面接を控える学生への事前準備について、選考フェーズごとにご紹介をいたしました。
上記に続き今回は、面接本番でよくある質問について特に2つの観点で具体的にご紹介し、対策・指導のやり方についても触れていきます。
皆さまは学生からよく、「『想定外』な質問にどう対策したらよいか?」と相談を受けることはありませんか?必ず経験できるとは限らない本番の面接だからこそ、具体的な面接のイメージがなかなかできない学生もいらっしゃいます。面接本番の質問例をもとに、まずは本番で予想できるやりとりに慣れること、特に質問を「される・する」という両面でイメージをしていくことは、重要なポイントです。そこからさらに、学生自身の思考をもう一段深めて面接準備もできれば、学生にとっての『想定外』を極力減らすことができます。
下記にて、「面接官からの質問」・「学生からの逆質問」を選考フェーズごとに解説していきます。
1.よくある「面接官からの質問」
・一次面接
「周りからどんな人だとよく言われますか」
「ご自身が強みまたは弱みと感じる部分はありますか」
「学生時代に打ち込んだことは何ですか」
企業に関しての知識の浅い選考初期段階では、その学生自身の人柄や価値観についての質問が多くされやすいです。また、それに対する学生の受け答えを見て、面接に前向きであるか、コミュニケーションが問題なくとれるか等も企業側は知りたいと考えています。
企業側は、まず学生が自分自身のことをしっかり理解できていること、その上でその人らしさが分かりやすく簡潔に発信されていることを期待しています。ほぼ初対面の限られた時間で学生の個性を知り、素養を測るためです。企業や仕事についてなど知らないと話せない話題よりかは、まず「学生のことを知る」という観点での質問がこのフェーズでは多くなる傾向にあります。
・二次面接
「入社してやりたいことはありますか」
「3~5年後はどうなっていたいですか」
「あなたにとって働くとは何ですか」
二次面接では企業の中身について聞かれることが多く、将来のビジョンやキャリアプランの方向性、仕事に対する取組み方など、個人の未来について特に深く掘り下げられます。
一次面接とは打って変わり、企業・業界についての理解ができているか・入社後の働くイメージができているかどうかなど、深く考えて自分に落とし込めているかを特にこの場面で見極められます。学生が「そこまで深く掘り下げられると思ってなかった…」と思うくらい、根っこにある部分について問われることが多くなります。
これに対する回答の期待として、企業・業界・仕事内容などについて学生自身でまず一通りの理解ができていること、その上で企業と学生自身の接点を学生なりに発信できていることが期待されています。一次面接とは変わり、企業情報・業界知識の理解度や、学生自身と企業の共通点をどう考えているかなどを問われます。そのため、「個人と会社」・「個人と社会」というように複合的な観点での質問が多くなる傾向にあります。
・最終面接
「なぜ同業界の他社ではなく弊社を志望しているのですか」
「入社した際の希望の部署はありますか」
「この会社をどうしていきたいですか」
「最後に何か質問はありますか」
最終面接では、“うちの会社”でなければならない理由をとくに問われやすいです。多数ある同業他社のなかでも自社でないといけない理由がなければ、長期的にみて良い採用とは言えません。また、二次面接で聞いた個人の未来よりもスケールが大きくなり、会社・社会の未来についての質問がしばしばあるのも、このフェーズでは特徴的です。総じて自社に入社する覚悟・働く熱意があるかどうかを見極めることです。
ここで期待されるのは、会社・社会の将来への貢献可能性を論理と感情の両面で伝えることです。偏りが多少あったとしても両方の視点で将来を考えている、感じていることが明確になれば、それをもとに自社の理念や事業の方向性と摺り合わせることができ、会社としてこの学生を採用すべきだと確証を得ることができるからです。そのため自然と、学生の考える自身や周囲の「未来」についての質問が多くなる傾向にあります。
選考フェーズが後になるにつれて、より自身の深堀り・企業の深い理解をしていないと答えに詰まってしまうような、難易度の高い質問がされる傾向にあります。理由は簡単で、企業は選考を受ける学生のことをより深く知って採用するかどうかを決めたいからです。
特に深く知りたいのは、学生がどんな性格で、どのような価値観のもとに生きていて、会社や社会にどんな影響を与えていきたいのか、またはどんな人間になりたいのかという、簡単な言葉では伝わりきらない部分についてです。これを知ることではじめて、自社との相性を隅々までしっかり判断することができます。
仮にここで学生のことをあまり知らないまま内定出し・採用してしまったらどうなるでしょうか?入社直前に急に内定辞退してしまう、働く意欲を全然見せてくれない、会社の風土になじめないなど、相性という側面で、様々なリスクが未来で起こる可能性があります。自社で活躍してくれそうな学生を採用するために、選考フェーズが上がるにつれて、よりきめ細かい情報・学生の本音を企業側は知りたいのです。
<対策方法(一例)>
1.1つの質問に対する端的な答えをいくつかに絞り、書き出す。
2.その答えを選んだ理由を、1つの答えに対し1~3個簡単に書き出す。
3.その理由が生じた当時の自身の体験や視点を、上記で出た理由ごとに書き出す。
4.ここまでに書き出したものを、(1.→2.→3.→1.)の順で話す練習をする。
【例文】
私の○○は、(1.)です。理由としては2つあります。1つ目は、(2.ー①)です。2つ目は(2.ー②)だからです。このように感じた具体的な経験として、過去に(3.)のようなことがありました。(3.の詳細)。このような経験から私は(1.)と考えています。
2.効果的な「学生からの逆質問」
企業のホームページや求人情報で見ることのできる基本情報以外で逆質問をすることで、より企業の理解を深めることができるとともに、「その会社を深く知ろうとしている」というアピールにも繋がります。これはどの選考フェーズでも言えることですが、面接官となる相手の視点に適した質問をすると、よりリアルな回答を得ることができて理解も深まります。
・一次面接
「仕事をする上で大切にしていることは何ですか?」
「1日の業務の流れについて詳しくお伺いしてもよろしいですか?」
「仕事の中で特に嬉しかったこと、大変だったことについてそれぞれお伺いしたいです。」
「御社で大きく成長する人材はどのようなタイプが多いですか?」
一次面接では、人事担当者や現場社員と会うことが多い傾向にあります。そのため、入社直後の仕事内容を理解するための質問・仕事のやりがいやコツについての質問は、現場のリアルな情報を引き出しやすいです。
・二次面接
「この事業を拡げるにおいて、お客さんに対してどのような想いがあるのですか?」
「御社の社員様は、どのような価値観を持った方が多いですか?」
「競合との差別化を図るために、どんな取り組みされていますか?」
二次面接では、現場の社員・リーダー、場合によっては部課長が面接官担当になることもしばしばあります。一次面接とはワンランク上の視点、特にチーム・事業部という観点での質問は視点が合いやすい傾向にあります。“自分が働く”という個人単位から、組織単位での思考に切り替えた質問はアピールにも繋がりやすいです。
・最終面接
「5年後・10年後に描いている御社のビジョンを教えてください」
「今後、伸ばしていこうとお考えの事業はありますか?」
「私は御社の仕事を通じて○○な人間になりたいと考えているのですが、入社を決意された方はどのような想いを持っている方が多いですか?」
最終面接では、経営幹部・社長が面接官となることが比較的多くあります。会社というさらに大きな単位での思考はもちろんですが、そこに自分がどのように関わりたいと思っているのかを絡めて質問をすると、アピールにもなりやすいです。テクニカルではありますが、質問の枕詞に自分自身の考えや価値観を含めて質問に繋げる逆質問の方法は、面接の場でもよく使われています。
<逆質問・アピールの一覧>
①自分の強みを謙虚にアピールする質問
・私が持っている○○の資格を御社の実務で活かす事は可能でしょうか?
・高校時代からマラソンを続けているので、体力には自信があるのですが、御社の業務でも役に立つでしょうか?
・大学で学び続けてきた○○をさらに深く学習していきたいと考えているのですが、御社での業務の助けになるでしょうか?
・私は初対面でもすぐに人と打ち解ける自信があるのですが、この性格は私が配属を希望している部署の仕事でも役に立つでしょうか?
・○○の経験を積んできたのですが、御社でこの経験を活かすため、さらに勉強するべき事があれば教えて下さい。
・御社と○○の事業で競合しているライバルの会社は●●の事業にも力を入れているという記事を読みました。私の資格も●●に活かせるのではないかと考えているのですが、今後その事業に取り組む計画はありますか?
・御社で良い実績を出すために、○○さん(面接官の名前)は私を見てどうお考えになるか伺っても良いですか?
・○○新聞で御社の離職率が業界内でもトップクラスに低い理由について書かれている記事を見たのですが、○○さん(面接官の名前)は何が理由だとお考えですか?
・御社の育児休暇の取得率について、ホームページなどには載っていなかったので、OG訪問の際に調査したのですが、運悪く私が尋ねたOGの方々は皆独身の方でしたので、詳しくお話を伺う事が出来ませんでした。もし差し支えなければこの場で伺ってもよろしいですか?
・私は大学のサークルでは代表という立場だったので後輩を指導する事に慣れているのですが、御社で活躍するためにもこの資質は必要になると思いますか?
②熱意を伝える質問
・もし内定を頂いた場合、私が入社までに一層学んでおくべき事があれば是非教えて下さい。
・もし、差し支えなければ一日の具体的な業務の流れを教えて頂いてもよろしいでしょうか?
・もしも採用して頂いた場合、配属先はどの部署になるのか教えて頂いても良いですか?
・配属先の社員の方が、どのように活躍されているのか、もっとお話しを伺いたいのですが、そのような機会を頂く事は可能でしょうか?
・もし御社で働く事が叶いましたら、結婚、出産後も働きたいと考えているのですが、母親として働いている女性はどの程度いるのでしょうか?
・○○さん(面接官の名前)が御社の社員として、何か心がけている事があれば、是非私にも教えて下さい。
・もし差し支えなければ、御社が今度力を入れていこうと考えている分野について、もっと話を伺いたいのですが?
・御社の○○事業に強い関心を抱いているのですが、もし採用して頂いた場合、その事業に携わる事は可能でしょうか?
・もし宜しければ、配属希望先の職場の雰囲気を教えて下さい。
・御社の製品である○○の製作に携わる仕事をしたい、というのが私の現在の目標なのですが、どのような努力をすれば、目標達成に近付くと思いますか?
③実際の労働環境を巧く聞き出す質問
・御社の業績の伸びから推察しますと、皆様遅くまで頑張っていらっしゃるのではないですか?
・御社の繁忙期はいつごろなのでしょうか?
・差し支えなければ、邪魔にならない程度に、社内を拝見させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?
・もし可能であれば、御社の転勤の頻度について教えて頂きたいと思っているのですが、よろしいでしょうか?
・社内を拝見した所、若い方が多くいらっしゃるように感じたのですが、私が配属を希望している部署でも社員の平均年齢は低いのでしょうか?
・私と同じ年齢で入社し、その後活躍している方の事例を伺ってもよろしいですか?
・○○さん(面接官の名前)にとっての、この仕事の最大の魅力を伺ってもよろしいでしょうか?
・○○さん(面接官の名前)がこの仕事を続けていく上で、苦労された事があれば教えて頂けないでしょうか?
・前職では毎月80時間程度の残業に取り組んでいたのですが、御社ではどの程度残業があるのか伺ってもよいでしょうか?
・御社の在宅勤務のシステムについて、ホームページとOB訪問で調査してきたのですが、実際の利用状況まで調べる事が出来ませんでした。もし可能であれば教えて頂けないでしょうか?
おわりに
弊社で採用支援をしている企業の採用担当者の中でも、「最後の逆質問があるかないかで、学生の入社への意欲を見ている」という方は少なくないようです。面接の場でしかできないような、企業の理解・採用担当者へのアピールをすることで、より就職活動を成功に近づけることができるのではないでしょうか。
また、事前の想定をより細かくしておくことで、本番で学生様それぞれの“自分らしさ”を、臆することなく面接官に伝えることができます。この質問例が全てではありませんが、少しでも学生様の面接準備に役立ちましたら幸いです。